2016年にはじまった「auのほけん」は、少しずつ取り扱い商品を増やしながら現在5つの保険商品を提供中です。
今まで「保険は知り合いの紹介でなんとなく、特に検討することもなく加入していた」というケースは少なくないかもしれません。
しかし、そういう人ほど本気で見直しをしてみると、驚くほど保険料が安くなるケースが多々あります。
「生命保険は万が一の備えだからしっかりしている大手を利用した方がいい」という意見については、私は半分正しく、残り半分は間違いだと考えています。
auユーザーにとって、「auのほけん」を学ぶこと=ほけん見直しの良いきっかけとなるかもしれません。
本記事では、大手生保とauのほけんをはじめとするネット通販型系保険ではどれくらいの保険料・保障内容の違いがあるのか、正しく比較し、検証してみます。
au定期ほけんは「生命保険」
そもそも「定期保険とは?」というところからわからない方もいらっしゃるかもしれません。
「定期保険」とは生命保険の一種で、ある定められた一定期間の死亡保障を得るための生命保険です。
生命保険の中では最もメジャーで、難しいと思われがちな保険の中でもわかりやすく、簡単な保険でもあります。
この定期保険に対して「終身保険」と呼ばれる保険も生命保険の一種で、こちらはその名のとおり、「終身」つまり死ぬまで保障をかけ続けることで長期にわたる安心を得ることができる保険です。
一般的に定期保険には解約返戻金がありません。つまり掛け捨てとなります。
その代わり、毎月の保険料がかなり安く設定されています。
逆に終身保険は、解約返戻金があることがほとんどです。
そのため、返戻率によっては銀行預金に回すよりもはるかにいい利率で資金を運用することができるという利点もあります。
そのため、貯蓄を目的として利用する人が多いのはこの終身保険です。ただし、毎月の保険料は高めです。
さて、「auの生命ほけん」のau定期ほけんは、あくまで定期保険であり終身保険ではありません。
そのため保険料は全額掛け捨て、途中で解約をしても満期になっても解約返戻金としてお金は戻ってきません。
一般的に「保険料が戻ってこない掛け捨て」と聞くと、「それなら解約返戻金がある終身保険の方がメリットがあるのでは?」と感じられる人がほとんどだと思います。
ただ、定期保険には、終身保険では絶対に真似できない大きな大きなメリットがあります。それは、格安の保険料で大きな保障を得られる、という点です。
たとえば、一家の大黒柱である夫に万が一のことがあった場合に備えて生命保険をかけることを考えたとします。
妻と子のために、最低でも2000万円の死亡保障がほしいと考えた場合、ある定期保険では毎月の保険料が5000円だったとしても、これが終身保険だと毎月5万円以上かかる、というイメージです。
基本的に生命保険は残された家族のための保険なので、死亡保障としてはやはりどうしても1000万円以上の保障はかけておきたいという人がほとんどだと思います。
しかし、積み立て型の側面がある終身保険ではどうしても解約返戻金のために保険料(掛け金)が高騰してしまうのです。
だからこそ、解約返戻金はなく、掛け捨てではあるものの大きな保障を得られる定期保険が必要となるわけです。
生命保険はそもそも何のためにかけるのか?という目的が非常に重要で、定期保険の目的、終身保険の目的、という具合に、それぞれどういう事態を想定して加入するのかを考える必要があります。
定期保険は、一般的に子育てが終わるまでの期間の大きな保障という意味合いが強いです。例えば、定年退職後の老後に何千万円もの死亡保障は必要ないケースが多いと思います。
そのため、10年~30年だったり、もしくは60歳まで、65歳までなど、期間を区切って保障を付けておきたい場合に使い勝手がいいのです。
一方、終身保険の場合は、あくまで積み立てと、死亡保障については葬儀代程度と考え、かけるとしたら保険料が負担になりすぎない程度の保険金額で設定しておくのが正しい利用方法といえます。
とりあえず今回は、au定期ほけんの話がメインなので、終身保険の話はおいておきます。
ちなみに、単身者で家族がいない場合、基本的に定期保険へ加入する必要はないと考えます。
自分に万が一のことがあった場合に親にお金を残したい場合は検討の余地がありますが、それ以外では一般的に親のために生命保険に加入する必要はないと思います。
au定期ほけんの引受保険会社はライフネット生命
auの生命ほけんで取り扱いされている保険は、ライフネット生命保険株式会社を引受保険会社としており、基本的に保険商品自体はライフネット生命の保険とまったく変わりません。
そのため、保険料や保障内容など詳細も酷似しています。auの生命ほけんとライフネット生命の保険商品を比較します。
保険種類 | 商品名 | |
auの生命ほけん | ライフネット生命 | |
定期死亡保険 | au定期ほけん | かぞくへの保険 |
終身医療保険 | au医療ほけん | じぶんへの保険3 |
終身医療保険(女性専用) | au医療ほけんレディース | じぶんへの保険3レディース |
がん保険 | auがんほけん | ダブルエール |
就業不能保険 | au生活ほけん | 働く人への保険2 |
2016年のサービス開始当初、auの生命ほけんは大きく分けて「生命保険」と「医療保険」の2種類だけの提供でしたが、その後すぐに「就業不能保険」が追加され、2018年からは「がん保険」も追加されました。
しかし、大手生保会社にあるような「終身保険」「学資保険」「個人年金保険」などの取り扱いはありません。
そういった意味では、auの生命ほけんは基本的に生命保険(定期)や医療保険の加入を検討しているユーザー向けと言えます。
au定期ほけんのメリット
それではau定期ほけんのメリットについて考えます。
基本的に定期保険は、保険会社にかかわらず非常にシンプルな仕組みです。すなわち、被保険者が亡くなった場合に保険金が出る仕組みです。
選ぶのは「保険金額」と「保険料の払い込み期間」のみです。とても簡単です。
大手保険会社の保険がわかりにくいと感じる方が多い理由は、保険の「主契約」に加えて、「特約」と呼ばれるオプションが存在するためです。まさにスマホ業界と非常に似ています。
必要な主契約だけでいいのに、不要なオプションをたくさん付けたままでいると、当然月額料金は高くなります。
加入状況もわからないため、それに気づかず保険会社に言われるがまま契約してしまっているケースが非常に多いのです。
そして困ったことに、大手保険会社の保険は、死亡保障と医療保障と積み立てなど、本来異なる役割の保険であるべきところが、すべてミックスされた設計になっていたりするわけです。
それと比較すると、au定期ほけんはシンプルに死亡保障のみに特化した保険なので、余分な保険料はかかりません。
加えて、大手生保のように営業社員の人件費がかからないため、その分安い保険料を実現できるのです。
保険業界も、スマホ業界も同じような構図でイメージするとわかりやすいです。
料金高い | 料金安い | |
スマホ業界 | 大手キャリア(ドコモ・au・ソフトバンク) | MVNO |
保険業界 | 大手生保(日本生命・第一生命・住友生命・明治安田生命など) | ネット系・通販系生保 |
すでにMVNOを利用している人はよくわかると思いますが、うまく活用すればMVNOは「安かろう悪かろう」というわけでもなく、十分満足して活用できることはすでに知られています。
保険業界においてもネット系・通販系の生命保険は「安いから悪い」というわけではなく、目的に沿ってうまく活用すれば劇的に保険料を安くでき、大手生保と変わらない保障を得ることができるのです。
ライフネット生命を引受会社とするauの生命ほけんは、料金が安いネット通販型の部類です。
保険商品の特徴や注意点をきちんと理解して契約すれば、十分利用価値があります。
au定期ほけんの保険金額と保険期間とは
au定期ほけんでは、保険金額500万円を最低ライン(51歳以上は300万円から)として、最大1億円まで設定することができます。
ここで言う保険金額とは、被保険者が万が一亡くなった場合に支払われる保険金の金額のことです。
被保険者側からしてみれば保険金が多ければ多いほど助かるので、金額はできるだけ大きくしたいわけですが、保険金額を大きく設定すればするほど保険料も上がるので、保険料と保険金額のバランスを考えて選択する必要があります。
au定期ほけんにおける保険期間とは、保障が得られる期間のことです。
たとえば保険期間を「10年」で設定すると、10年間の間にもし万が一のことがあった際、保険金が支払われるというわけです。
「たった10年かけていてもそのあともし何かあったら全く意味がない」と感じられるかもしれませんが、その10年間を乗り切れば、そのあとは大きな保障は必要なくなる状況もありえるわけです。
だからこそ、自分の年齢と人生設計に沿って、これから何年間は大きな保障を得られたほうが良いのか?万が一の際にいくらくらいの保障が必要なのか?を考えて保険は契約する必要があるのです。
一般的には、結婚し、子育てが始まると大きな保障が必要になるケースがほとんどです。そして子供が成人するまでの間、この期間が定期保険が最も活躍する期間と考えればいいでしょう。
多くの場合、子育てが終了したあとは、配偶者に対する保障のみがあれば間に合います。
遺族年金もありますし、ある程度の年齢になっていれば老齢年金も多少は期待できます。もしそれくらいの年齢までにある程度の貯蓄もできていれば、それこそ保障は最低限でよくなっている可能性も高いです。
そう考えると、年満了(10年・20年・30年)ではなく、歳満了(65歳まで・80歳まで・90歳まで)の「65歳まで」を選択してもいいかもしれません。
保険料は、短いほど安く・長いほど高くなります。
au定期ほけんの告知義務
auの生命ほけんを契約するには、もちろん告知義務が存在します。
告知は保険契約の際に義務とされている項目で、必ず被保険者である自分自身の健康状態や職業、年収について告知を行う必要があります。
告知は保険契約における不平等をなくすための措置であり、例えば重大な病歴があったり、危険の大きい職に就いている場合などには、保険契約を断られることもあります。
万が一、不正確な情報を告知して契約をしたとしても、その事実が判明すれば保険契約解除になったり、万が一の際に保険金が支払われないこともありますので、告知は事実を正確に、十分に注意して行う必要があります。
au定期ほけんの契約形態について
au定期ほけんは、契約日時点の満年齢(契約年齢)が20歳~70歳までの方が申し込みできます。さらに、保険を申し込む人(保険契約者)、保険の対象となる人(被保険者)、支払い口座の名義人(保険料支払者)が同一の契約のみ取り扱いしています。
通常の保険は、保険契約者と被保険者が別々だったり、支払い口座を別名義にしたりすることもできるのですが、auのほけんについてはあくまでその3点が同一である必要があります。
加えて申し込みの際に、au IDとメールアドレスも必要となっているため、その条件をすべてそろえて申し込みをする必要があります。
au定期ほけんセット割終了と還付金付auのほけん
auのほけんサービス開始当初、auの定期ほけんに加入すると、auケータイ/スマホ契約から最大5年間200円割引するという「au定期ほけんセット割」が提供されていました。
200円×5年間(60ヶ月)なので、総額にすると12000円分の割引となります。
そう考えると、ライフネット生命単独で「かぞくへの保険」を申し込みするよりも、auユーザーであれば確実にお得にはなります。
ただ、このセット割は、保険業界の中でかなり批判の的となってしまいました。つまり、「保険料の実質的な割引であり、保険業法違反ではないか」という声が上がっていたのです。
この問題はそれ以前から言われていた問題でしたが、KDDIはあえてグレーゾーンの割引を強行した形で提供していました。
ただ、さすがに批判に堪えられなくなったのか、2016年12月1日よりこれまでのセット割を終了し、保険料の還付金を付加する「還付金付きauの生命ほけん」を提供開始しています。
還付金は200円×60ヶ月とまったく変わらず、結局、表現が変わっただけで実質的に何も変わっていません。
しかも、保険1契約につき毎月200円割引されるので、例えば「au定期ほけん」のほかに「au医療ほけん」「auがんほけん」の計3保険を契約していたとすると、合計で毎月600円の割引を受けらます。
こうしたことにどれだけの意味があるのかは疑問ですし、何より保険業界の批判は結局免れていません。
が、事実、auユーザーはau生命ほけんをセットで契約することで家計トータルの負担を大きく抑えられます。
口コミ評判では「auに縛られる」との声も
auの定期ほけんへの加入を検討した人の評判としては、「確実にお得になる」という声がある一方で、注目すべきは「auから離れにくくなる」という口コミもある点です。
これは全くその通りで、結局「au定期ほけん」のメリットは、実はauと料金をまとめられるという点のほかには、上記で説明した還付金しかないのです。
となると、au携帯電話+au定期ほけんよりも、格安SIM+かぞくへの保険(ライフネット生命)の方が格段に安くなる可能性もあるわけです。
そうなってくるとさらに、ライフネット生命の保険を必ずしも選択する必要性がなくなってしまうわけで、他のネット通販型保険も含めて一から本当に必要な保険を選んだ方がいい、という話になってきます。
今はauを利用しているとしても、今後格安プランを提供する他社へ乗り換える可能性は十分考えられると思います。
そうすると、auであることが大前提で選択したはずのau定期ほけんの存在意義が失われてしまうどころか、「しがらみ」や「縛られる」意識へと変わり、他事業者へと飛び立ちづらさがあります。
本当に保険を検討したいと考えているのであれば、今後どうなるかわからないau携帯電話とのセット割だけを鵜呑みにして選択するのは危険です。
もともとセットにしても200円×60ヶ月の差です。
人生において「家」の次に大きな買い物とも言われる「保険」の中で、総額12000円分の還付金はそれほど大きい金額ではありません。
スマホのプランを見直したり、格安プランの事業者へ切り替えれば、簡単に月3000円以上安くなる可能性が高いのです。
そうなれば12000円の還付金など、4ヶ月で元を取ります。
将来の動きやすさを考慮するなら、保険とスマホ契約とは、完全に切り離して考えたが間違いありません。
特に初めて保険を検討する場合などは、正しい保険の見直しのために、親身に相談してくれる相手をあたってみましょう。